「アンカーボルトソング」イベントが良かったので雑感をまとめておきます。ネタバレありです。まだイベント本編・イベントサポート未読であれば、必ず先に読んでからどうぞ。
まずは全体の流れを確認します。
ソロの千雪
今回のイベントではまず千雪がソロのWeb番組の仕事での活躍が描かれます。そこでかかわる様々な人たちと凄く上手くやっている所が描かれます。その空気感は、仲がいい気の知れた関係ではなく、だからと言って自分以外は全てライバルであったり利益を得る為の業務上の関係というビリビリしたものでもない、それらの中間にある「お互いの様々な心遣いの上に成り立った平穏で良好な関係」です。
これをやっていけるのはやはり千雪の培ってきた業界人としてのスキル、人としての強さを感じさせられます。そして、これはアルストロメリア内の仕事では大々的に描かれてこなかった部分がメインになっています。
ソロの甘奈
甘奈にも大きなソロの仕事が舞い降ります。こちらは甘奈プロデュースのコスメアイテム(リップとポーチ)を作るという仕事で、強い意気込みが語られます。G.R.A.D.編で見せたような迷いはもう無いです。
甘奈も自身の新しい仕事に対して挑戦していきます。
そして甜花は
甜花だけ取り残され気味になる、という話にはならず、少し遅れて甜花にもバラエティ番組の仕事が来ます。甜花は千雪、甘奈に感じていた変化や輝きに、自分も向かっていきたいと頑張る事を決めます。
番組内での甜花は他の2人比べるとたどたどしく苦しい部分も有るものの、他のキャストにフォローしてもらいながら甜花なりにやっていきます。大丈夫か甜花……。
とまどい
それぞれソロの仕事が続く中で、新しい挑戦、新しい出会い、宿題などの元々の日常が続く中で、充実していながらもお互いに余裕が無くなってきます。また、ファンからも「ソロの仕事が増えるのは嬉しい」という意見が多い中で「でも”アルストロメリア”が最近見られず寂しい」という意見も見え始めます。これは悪意を持ったものではなく、変わっていくアルストロメリアの立場を見るファンの素直な感情だと感じました。
それについては「ファン」としての立場でもあるプロデューサーも同じ気持ちで肯定します。
それに心配する千雪、変化に戸惑う甜花、そしてコスメアイテム制作の中で行き詰まりに直面する甘奈は、2人と同じように頑張りたいからこその挫折感である事が見えてきます。
その中で甘奈は甜花を凄いと思っている事、甜花も甘奈を凄いと思っている事をお互いに伝えた上で「それぞれ自分で考えるべき事であった」という結論に至ります。お互いの気持ちが離れていた、すれ違っていたというような話ではなく、お互いがライバルであり、それぞれ頑張り、でも気遣いのミルクティーは入れる、その先の3人がアルストロメリアであるという事がだんだんと形を持ってきます。
変わり続けるアルストロメリア。思い出とこれから
プロデューサーの設定した久しぶりの3人のステージ、その準備の集まりの中で3人はファンの作ったスライドから見えるこれまでのアルストロメリアの思い出、それぞれの現状とこれからの事、それらを踏まえた上でファンへ伝えたい気持ちを再確認していきます。
アルストロメリア3人のこれまでの思い出。それは、それぞれが頑張って、良い事も悪い事も有ったからこそ生まれてきた物で、今のソロメインの挑戦も大事な事。「3人でアルストロメリア」でずっといるためには、ずっと変わりづ付けなければならない、それをしてきたからこそ今が有り、アルストロメリアは健在であるという結論に至ります。
感想
ファンの見てきたアルストロメリアの綺麗な思い出、アルストロメリア3人の紡いできた思い出、これまでにあった良かった事、悪かった事、挑戦、とまどいを経ての3人の今、これからもそうあり続ける為には工事の続くビルの様に「戦って」行かなくてはならない。アルストロメリア3人の花のような華やかさと脆さ、永遠ではない儚さ、それでいての強さと強固さを感じられる良いシナリオでした。アルストロメリアは強い……。
ソロでも上手くやって行けるが、3人でのアルストロメリアをこれまで凄く大切にしてきた千雪だからこそ感じる寂しがるファンからの気持ちに思う事、他の2人の輝きに負けないようどんどん挑戦して行けるようになった甘奈、周りに敏感で小さい失敗を積み重ねつつも前に進む甜花と、3人それぞれ見所が濃いです。書いてない部分でも見所が沢山有ります。
ユニットメンバーがお仕事の都合上疎遠気味になる話は例えばアンティーカのファン感謝祭などでも扱った話ですが、恋鐘という大黒柱の居るアンティーカが家族・場所としての解を得たのとは異なり、「薄桃色にこんがらがって」を経たアルストロメリアは既にお互いがライバルであり、だからこそいつまでも3人で居られるように変わり続け、自身が過去の思い出にならないように戦い続ける、だからアルストロメリアはずっと一緒だという結論になるのは同じ部分・違う部分が際立っていて印象的でした。アルストロメリアの歩んできた道のりを考えるととても説得力があります。
物語である部分、物語ではない部分を切り分けて見せたアンティーカの「ストーリー・ストーリー」に対し、「アンカーボルトソング」では思い出を肯定したうえで抗い、そして次の思い出につなげるという見せ方も、似ているようでいてだいぶ違う印象を受ける内容になっています。書くのが上手い……。
話は変わって今回、ソロでの仕事の厳しさをいろんな面から描きつつも、例えば千雪に対しソロの方が向いているんじゃないかと言うような人は現れないし、甘奈の出すアイデアが扱われない前提の名前借りのような展開は無いし、甜花と仲良くなりたい駆け出しの子に裏の気持ちが有ったりのような、これまでのシャニマスを読んでいると少し身構える部分に対しては全くそういう事は無く、それでいてまっとう?(もうちょっと適切な表現が有るはず)に厳しい面が描かれているのも特徴的でしたね。
今回のシナリオの主題はそこではないですし、その辺のバランスなんでしょうね。良かったと思います。
イベントサポートでは甘奈のコスメアイテム制作も一度の挫折を経つつも、甜花とのやりとり、千雪とのやりとり、プロデューサーからの提案を経て、無事納得のいく形で製品化できる所にたどり着きます。この辺りの流れは薄桃色にも近いですね。その制作したアイテムが千雪の上手くいっていない部分、甜花の上手くいっていない部分で登場して締めくくりとなる美しさが凄いです。シナリオを描くのが上手くないか??
今回、外から見える物事としては極端に大きなことは起きていません。3人それぞれソロの仕事でも大活躍、小さなイベントだがアルストロメリア3人としてのイベントも開催された。というお仕事が続いている中での再確認。それは薄桃色イベでもそういう部分が有りましたが、今回はそれらも経た上での既に変わりつつある・変わってきた現状の再確認と肯定、これからの道筋の明確化という気持ちの整理をする話です。このどちらかというと内向きの話を面白く、転機もあり、やり取りや機微にリアリティのある質感を持たせつつ描いたのはほんと力作でした。
これからのアルストロメリアも変わっていくし、思い出と違って永遠には残らないけど、3人が前向きに進み笑っていられる間「アルストロメリア」は強く保たれ続けると思える、希望に満ちた話で良かったです。ファンもだからこそ3人が輝いて見えるんじゃないでしょうか。
なんかずっと同じことを言っている気がするのでここから雑感です。
雑感
- 仕事の中で行われる「匂わせ」、ファンへアルストロメリアを伝える「匂わせ」、ミントがプラスされたこれからに向かっていくリップの「匂わせ」の繋がりの上手さ。
- 甜花のカッコいい発音
- この妙に泣ける話、千雪が書いたんか……。甘奈おばあちゃん
- ハム太郎
- ずっと工事していると言われるとやっぱり横浜駅が最初に印象に浮かぶよね。実際は都内だと思う。同じように大きな工事の続く渋谷であったり。
- アルストロメリア、「幸福論」という大元のテーマに忠実。